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2025/05/23 更新
看護学校でパワハラの講義をしました
- コラム
令和7年2月18日、淀川区医師会看護専門学校で、卒業する生徒向けに、社会に出てから役立つものをという気持ちを込めて、パワーハラスメントやカスタマーハラスメントについての講義をしました。私は、この学校で、10年間余り関係法規の講師をしてきたのですが、同校が令和7年3月で閉校となるため、最後の講義でした。
パワハラとは、①優越的な関係を背景とする、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた、③労働者の就業環境を害する(働く上で見逃せない程の支障が生じた)言動、という3要件に当てはまるものとされています。しかし、自分が行った行為や受けた行為がパワハラか否かを判断するのは、難しい場合も多いです。講義では、パワハラか否かの限界事例を挙げて、生徒にパワハラか否かを判断してもらいました。
例えば、実際に裁判になった事例なのですが、「洗浄液をこぼした上、丁寧に拭き取らなかった部下を叱責する際に、上司が、『あほ』とののしるように言った」という事案では、この上司の発言はパワハラに当たるでしょうか?これは滋賀の事案だったのですが、関西では「あほ」と言うくらいではパワハラには当たらないのでしょうか?結構難しいですよね。実は、大阪高等裁判所は、「あほ」と言ったのは1回だけではないことや、その他の言動も踏まえて、上司の発言は違法であるとして、部下の会社に対する損害賠償請求を認めています(大阪高裁判決平成25年10月9日)。パワハラと認めたということです。
部下がミスしたときに叱ることや注意することは当然必要なのですが、「バカ」「あほ」などの人格や人間性を否定する発言は、パワハラになり得ます。「プレーを叱るのであり、プレーヤーは否定しない」ことが大事です。講義についての生徒の感想の中にも、「言葉の選びが大切なんだと学べた」というものがありました。叱るときに頭に血が上ってしまうことはよくあることと思いますが、言葉選びに注意することが職場環境を良くすることに繋がるのではないかと考えています。
当事務所では、パワハラに限らず講演の依頼を受け付けていますので、弁護士による講演をお考えの際にはお声がけいただけると幸いです。(弁護士亀山元)